【Before The Huddle 第5回】
大久保 壮哉 「運命と試練」
 
東北学院榴ケ岡高校出身。
高校時代は野球部でキャッチャー。
大学に入りアメフトを始め、1年生ながら秋の最終戦で初出場。
2年生の春からスタメンを勝ち取り、4年生となった今はチームの主力としてOLユニットを牽引。
優しい性格と強い責任感を持ち合わすTHE OLの性格でチームメイトからの信頼は厚い。
口癖は「飯食え」
 
 

 
(4年 副将 OL 背番号79番185cm 130kg)
 
 
《Q1アメフトを始めたきっかけは何ですか?》
 
甲子園ボウルに出場したかったからです。
 
自分は野球をやっていたんですけど、高校3年生の代の最後の大会で準決勝敗退という悔しい思いをしました。
そして、大学に入学する前に甲子園ボウルという存在を知ってアメフトをやろうと思いました。
 
甲子園は選ばれたチームしか試合ができない神聖な場所です。
 
野球を続けるという選択肢もありましたが、大学野球の聖地は神宮球場なのでとにかく甲子園でプレーしたいという思いからアメフトをすることにしました。
 
 
《Q2野球がアメフトに活かせたことはありますか?》
 
キャッチャーをやっていたおかげで膝や股関節が柔らかかったのはOLをするにあたって役に立ったと思います。
 
キャッチャーはフィールドで唯一選手全員を見渡せるポジションであり、逆に全員からも見られるポジションです。
 
見られるからこそチーム全体の空気を作り出すのは自分だと常に意識していました。
これはアメフトにも言えることだと思っていて、OLというポジションはとにかくQBやRBに信頼してもらえるような存在感が必要だと思っています。
 
 

 
 
《Q3高校時代はどんなチームでしたか?》
 
野球の技術はもちろん大事ですが、人として挨拶など規律に関しては凄くこだわっていました。
 
挨拶はもちろん、道具の整理など細かいところにこだわろうという考えがあり、授業中寝ないだとか、赤点を取らないだとか、私生活が野球に現れてくるということをチームとして凄く意識していました。
 
高校時代は専用グラウンドもなければサッカー部と共用で使っていたため、外野ノックなど広いスペースを使う練習はできなかったので工夫をしながら練習していました。
 
例えば、自分の代は今までのように1人のエースピッチャーで完投するのではなく、4人のピッチャーで継投するチームだったので、それぞれのピッチャーに合わせた配球術を社会人の野球チームに教わりに行きました。
 
練習メニューに関しては、高校2年生の冬に秋田の甲子園常連校のチームと行った合同練習が今までの比にならないほどキツく、このままではいけないと思って自分達のメニューもかなり強度を上げました。
強いチームと比較することは重要だと実感しましたね。
 
 
自分は2年生の頃からベンチに入らせて頂いていて出場していました。
3年生になったらレギュラーになれるんだろうと思っていましたが、3年の春に全く試合に出場させてもらえなくなったことがあります。
 
当初は原因が全く分からず、この事に関する愚痴を言ってばかりでした。
正直自分の方が上手いのに何で出場できないんだとずっと思っていました。
 
そんな時にバッテリーコーチに技術面だけではなく精神的なことを教えていただき、考えが変わりました。
 
今まではピッチャーが自分の構えたところに投げずに打たれてしまった時や、捕れるボールを野手がエラーしてしまっていたことが顔に出てしまっていました。
 
その事に関して、キャッチャーは全員から見られているので自分が不満そうな顔をしていることがチームに伝染することがある。ということを教えて頂きました。
 
そこからは練習中も常に見られていることを意識してチームメイトを常に鼓舞し続け、結果的に夏の大会前にはスタメンになることができました。
 
自分にとってはこの出場できなかった期間で人間的に大きく成長できたと思います。
この考えが今現在大学でアメフトをするにあたっても生きていると思います。
 
 
《Q4大切にしている価値観はありますか?》
 
自分の座右の銘として「運命を愛し、希望に生きる」という言葉があります。
 
目標はチームに関しても、個人としてもありますが、その目標に向かっていく中で良いことや悪いことが降りかかってくると思います。
しかしそれは全部、自分に降りかかった試練だと思って頑張るべきだという言葉です。
 
高校の時にこの言葉に出会い、当時愚痴だけ言っている自分が情けないなと思いました。
 
そこからは本当に上手くいかないことも、どうすれば上手く行くんだろうという風に考えることができるようになりました。
 
この言葉は大学でも凄く意識しています。
特に1、2年生の時に練習のレビューや筋トレなどで先輩から厳しいお言葉を頂いていた時は辛かったですが、それでも甲子園に行きたい、強いOLになりたいという目標はぶれなかったのでこの目標に対して降りかかっている試練は絶対に為になると思って受け入れ続けてきました。
 
例え今すぐに改善できないとしても素直に受け止めて吸収していき、その1試合、1日を積み重ねていくことで自分が描く理想に近づけると思い、実行してきました。
それが今につながっていると思います。
 
自分自身まだまだですが、今になってあの頃の厳しい指摘に対して逃げずに向き合ってきてよかったなと実感します。
 
また、アメフトを初めてすぐ試合に出場出来たりと今までトントン拍子でやってきたからこそ、日本代表のセレクションに落ちた時はかなり悔しかったです。
 
しかしこれも、今まで調子に乗っていた自分に対して神様から与えられた試練なんだと前向きに捉えて、今まで以上に本気で練習しました。
 
特に、他校の同期で受かった選手には絶対負けたくないという気持ちでずっと意識してきました。
 
最初は甲子園に行きたいという理由で始め、それは今も大きなモチベーションの一つではありますが、今はとにかくOLとして一番強くなって一番注目されたいという気持ちでやっています。
 

 
 
《Q5未経験として活躍する為に必要なことはなんだと思いますか?》
 
自分が成功例というわけではないですが、今思うとやっていてよかったなと思うのは自分自身に小さな目標を課してそれをコツコツ達成してきたことです。
 
未経験で入部したら、まずは徹底的に基礎をやるのでゲーム形式の練習に参加する機会は少ないです。
基礎練習なので、必然的にやれることは限られてきます。
 
そうなった時に、例えばこれを今週までにやろうとか決めて、よし、達成したから次やろうってコツコツとクリアしていくことが大事だと思います。
 
練習だけでなく、体重もそうです。
自分が1年生の時は2週間スパンで2kg増という目標を立ててコツコツやっていました。今では入学当初から50kg増えました。
 
未経験だからこそ、自分自身に強く求めていくべきです。
 
自分の中でどういう選手になりたくて、その為に何をすべきかを明確にし、小さな目標でいいからひとつずつ達成していくことが大事だと思いますね。
 
 
《Q6アメフトを通して、個人としての目標は何ですか?》
 
1番大きくて、強いOLになること。これが自分個人の目標です。
 
自分はとにかく誰にも負けたくないという思いがあります。
 
特に現在、最上級生としてプレーしていて自分より上の学年はないわけで、負けていい理由が一切ありません。
 
強いチームを見たら強さの根底にはいつもOLがいます。
勝つにはまずOLが強くないと始まらないなと思っています。
 
まずチームとしての目標として勝利があり、勝利のためにはOLユニット全員が強くなければいけません。
 
そして自分はその最強のOLユニットの一員でありたいと考えています。
 

 
 
《Q7 OLユニットの後輩にはどんな考えを持ってアプローチしていますか?》
 
自分自身は先輩から厳しく言われてきたんですけど、それって絶対人によって変えないといけないなと思っています。
 
なので、後輩のアメフトに対する考え方などを見てそれぞれ指導の仕方を変えていますね。
 
例えば藤原(1年 OL)や香取(2年 OL)は高校の頃から活躍しているため、成長するかしないかはほんと些細な違いだと思っているので、既にある程度確立された根本的なプレーに関しては強く言わないようにしています。
 
特に、彼らは自分自身の課題への向き合い方を確立しているのであえて強くは言わないようにしています。
 
逆に課題に真っ向から向き合うことが苦手な選手もいます。
 
例えば何かと言い訳をしてしまうなど、逃げ道を作ってしまう選手です。
 
成長するにあたって自分に言い訳をして欲しくないと思っているので、その点に関しては細かいところでも必ず指摘しています。
 
 
《Q8ラクーンズの魅力は何だと思いますか?》
 
自分の考えを持っていて、素直な人が多いところですね。
 
また、アメフト未経験者が他のチームと比べてかなり多いですが、ラクーンズはむしろ未経験が引っ張っていると言っても過言ではないくらい、未経験の影響力が強いところも魅力のひとつだと思います。
 

(photo by Riku Kadowaki)
 
 
《Q9今までの試合を通して印象深かったシーンはどこですか?》
 
初めて試合に出た1年目の秋の明治戦は印象に残っていますね。
 
かなり緊張していたのでアサイメントをとにかく遂行することしか頭になかったです。
今となれば考えられないですがヒットする対象で頭が一杯一杯でした。
 
もう1つは2年目の春の立命館戦が印象深いです。
 
初めてスタメンとして出場しましたが、相手選手がとても大きく、恐怖心を抱きました。
重さは強さに比例するんだと改めて実感しました。
 
そんな経験があったからか分からないですが、自分が思う理想のOL像はスピード型のOLではなく、とにかく大きくて強いOLです。
 
だからこそ自分は食事と筋トレを重要視してコツコツやってこれたと思います。
 
 
《Q10今シーズン注目して欲しいプレーを教えて下さい。》
 
今年はとにかく1対1に注目して下さい。
 
1年生の頃からステップには自信を持って取り組んできたので、今年はその集大成として目の前のディフェンスに自分自身の全てをぶつけて圧倒します。
 
ご声援よろしくお願いします。